© 早坂明
落語好きだった店主故小ノ澤勇を追悼する落語会が芝落語会の協力を得て7月23日に開催された。噺家は第一回を飾った桂平治師匠と柳家小蝠さん。故人はブログへのコメントで「将来名人と言われる器だと思います」と平治師匠を高く評価し、その後、第四回(お血脈/うどんや)、第七回(長短/火焔太鼓)、第十回(位牌屋/松山鏡)、第十三回(肥がめ/源平盛衰記)にも来ていただいていた。その間に平治師匠は平成21年度(第64回)文化庁芸術祭で大衆芸能部門新人賞を受賞され、またこのたびは第十一代桂文治を襲名されることが決まった。席亭の目は正しかったと感慨深い。
一席目は柳家小蝠さんの「二十四孝」。古代中国の孝行息子を称揚した「二十四孝」のパロディ。
続いて桂平治師匠の「 禁酒番屋」。酒の持ち込みをチェックする番屋を何とか通過しようとするが毎回横領(没収)されてしまう。目標を酒の持ち込みから役人への報復に切り替えた町人の奇策。次第に酔っていく役人の様子を、呂律で的確に表現。落語の面白さは少しずつ変えながらの繰り返しにあると思う。
仲入りを挟んで柳家小蝠さんの「豊竹屋」。義太夫風を巧みに披露されるが、なんとちゃんと習ったことはないという。と後で平治師匠が誉めながら暴露してしまった。「お客さんもわかりませんから」
とりは出囃子を「いやとび」から桂文治師匠の「武蔵名物」にかえて登場した平治師匠による「幽霊の辻」。〈首縊りの松〉説明のところではお得意のパントマイム(落語CDを6枚も出されているが、これは生かDVDか、とにかく画がないと絵にならない)。オリジナルのサゲまでついて「なるほど、このための伏線であったか」一同感嘆して大拍手。
その後懇親会に移り新板前・佐藤智也による料理が供された。さらに平治師匠と小蝠さんの色紙の他、多数の寄付品を景品にしたジャンケン大会が和やかに催された。
席亭物故で打ち止めかと思われた落語会だが、11月に第十五回の開催が決まっている。
また来年の命日の翌日には令嬢小ノ澤幸穂さんがピアノリサイタルを開催される。